岡山中学校・岡山高等学校

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新コース制が目指す教育(校長の試案)

2018/01/12

新コース制が目指す教育

1.はじめに

本校の基本線は「中高一貫教育」で、昭和57年の本校創立以来の岡山中学校・岡山高等学校の教育の特徴です(4期生から高校からの入学生を迎えています)。中学からの入学生は6年間本校で学び、特色あるカリキュラムのもとじっくり勉強に取り組み進路設計をします。これは6年間という長い時間があって初めて成立する教育の営みであると自負しています。生徒たちは6年後の大学進学に向けて、懸命に勉学に励み、生涯の友人を作り、ゆとりをもって部活動・クラス活動・読書・学年行事を通して自分自身の内面を充実させます。その間に、「天分発揮」の校訓と「人に優しく、己に厳しく、勉強はたゆみなく」の教育目標にもとづいて「思考力・表現力・判断力」などこれからの社会で生きていく力を養っていきます。全員が岡山高校に進学し、全員が各自夢見る大学へ進学していくことを全力で応援したいと思います。

さて、平成30年度岡山中学の入学生(37期生)から新コース制が導入されます。それに伴っていくつかの点で岡山中学・岡山高校の教育のあり方も変更が予定されています。もちろん、平成30年度の高校新入生(34期生)にも変則的な形ですが新コース制が導入されることになっています。この稿では37期生(新中1)を対象にした新コース制の狙いと教育活動における変更点を具体的に説明したいと思います。

 

2.6年間の教育活動

 37期の入学生の募集単位は従来と同じく「東大・国立医学部コース」(東医コース)と「難関大コース」のままですが定員が異なります。従来の30名と105名ではなく東医コース20名と難関大コース115名に変更されます。東医コースを名前のとおり「東大・京大などの旧帝大と国立の医学部医学科のみを目指すコース」にするために定員を20名に絞ったのです。今後学年が進行するにつれて、毎年上位20名が東医コースに集まって学習することになります。

 6年間の教育活動を3つのステージに分けると、だいたい以下のようになります。

〇第1ステージ(中12

入学したすべての生徒の基礎力や学習習慣を形成することを目標にしています。詰め込みを伴う「学力の促成栽培」を避け、思考力を育成する土台を作ります。余裕のある生徒は「発展的学習」を行います。

〇第2ステージ(中3・高1

「東医」1クラス・「メディカル」1クラス・「探究」2クラスの合計4つのクラスに分かれ、さらに高1から文理別のカリキュラムに従って本格的な勉強を始めます。どのクラスも「急がず、悠々として、どんどん学習する」ことになります。「東医」では英数国の先取り学習を深めます。「メディカル」では理数と医学部講座を中心に学習を深めます。「探究」では国数英の学習と総合的探究を深めます。また、探究活動や学年行事、海外留学や医学部講座などを通じて、志望大学・学部にPRできる学びのスキルやポートフォリオを作りながら第3ステージへと進みます。

〇第3ステージ(高23

進学志望に合わせて「東大・京大系」「国公立医学部系」「メディカル系」「理系探究系」「文系探究系」「グローバル系」に分かれて学習を深めます。高3では大学入試の演習を中心に学習し、「行ける大学」ではなく「行くべき大学」を目指します。

 3.第1ステージ

 第1ステージで一番大事なことは集団で勉強することの楽しさを体験させ、同時に毎日の予習・復習をこなす根気強さを育てることです。つまり勉強の面白さを満喫させながら学習習慣を身につけさせるのです。何でも覚えてしまえば試験をうまくクリアーできると生徒に思わせてしまうと、彼等の6年間は暗記で終始する灰色の6年間になってしまいます。そうさせないのが教員の腕の見せ所です。

同時にクラスメイトとの人間関係作りを学ばなければいけません。県内・県外の小学校から集う彼らを上手に中学校生活にソフトランディングさせる必要があります。全校で取り組む5月の「ミハルカス2018」(金甲山への長距離歩行)、創立以来37年間続く7月鳥取臨海学校、9月桃山祭(文化祭)や岡山ドームでの体育大会、弁論大会や英語スピーチコンテストなどの学年行事を通じて、「失敗しても立ち上がれるたくましい人」を育成する必要があります。また中1で行う「クエスト・エデュケーション」(通年の「総合的な学習の時間」)、中2で行う「職場体験学習」を通じて進路探究活動を行い、その成果をプレゼンする場を設けて「根拠を持って自分の意見を発信し自発的に行動できる人間」を育成していきます。これは結果的に2020年以降の大学入試選抜において実施される人物本位の多元的な評価(ルーブリック評価・ポートフォリオ評価)による個別試験に対応する力を養うことにつながっていきます。

4.第2ステージ

 第2ステージは将来の夢の実現を意識した勉強を開始する段階です。また高1からは全ての生徒が文系・理系を選択し文理別のカリキュラムに沿って学習することになっています。東医クラスでは高校段階の学習を先取りしていきます。特に英数国の分野では週6時間の学習を通じて「急がず、悠々として、どんどん学習する」ことになります。何でも先取りすればうまく行くわけではありませんから、定着を重視しながら先取りすることになります。東医クラスでの学習を一言でいえば「学問の王道を進む」ということです。

メディカルクラス(単独)では「数学・理科」の学習に重点を置きながら学習します。志を同じくするクラスメイトと切磋琢磨しながら、理系数学と理科3科目学習に向けた豊富な実験や課題研究、放課後講習を行っていきます。一言でいえば「理数に特化した学習」を行います。

探究クラスでは高校の授業の先取りをあまり意識せず、週6時間の学習を通じて「納得と定着」に基づいた学習活動を進めていきます。小テストの実施、課題の点検、「岡中チャレンジ」(定期考査以外の課題テスト)などを通じた学習への動機づけを重視した取り組みを進めますが、気がつけば理科・数学における高校内容を先取りしていたということになりそうです。

次に、授業以外の取り組みを説明します。東医クラスでは旧帝大の魅力や学問の面白さを、本校OBを招聘した交流会で体験させ「知的に考えることができる人間」を育成します。東大をはじめとする旧帝大は、ある意味で学問の総合商社です。何でも学習できる旧帝大への憧れを育みたいと考えています。

メディカルクラスでは、東医クラスの医学部志望者と一緒に現役医師による「医師倫理教育講座」を受講することになります。すでに何人かの本校OBが手を挙げてくれています。医師が直面する現代の課題や守るべき医療倫理を具体的に説明し、同時に多面的な医療活動の姿を報告してくれることになっています。また、総合的な学習の時間を使って医療従事者として必要な資質や知識を身につけるために、大学訪問やボランティア活動、医療時事・科学技術に関わるテーマを中心に研究・調査・ディスカッションを行う「医学部講座」を開始します。

探究クラスでは、世の中の仕組みや社会問題への関心を育みながら、どうやって社会に関わっていくかを探究する活動とその活動の結果のプレゼンを通じて「根拠を持って自分の意見を発信し自発的に行動できる人間」を育成していきます。

5.第3ステージ

3ステージでは、クラスは第2ステージのままですが、数学や英語や理科・社会などの授業では「東大・京大系」、「国公立医学部系」、「メディカル系」、「理系探究系」、「文系探究系」、「グローバル系」の6つの系統に分かれて学習します。「国公立医学部系」と「メディカル系」の違いは、主に国立医学部を第一志望にする「国公立医学部系」と国立の歯学部・薬学部や私立の医学部を第一志望にする「メディカル系」という違いがありますが、ともに放課後に数学と理科の発展的な問題演習に取り組み受験に必要な応用力を鍛えます。また、高2からは医療系小論文を題材に論理的な記述力を鍛えながら志望理由書の作成を開始し、高3からは個々の志望大学別に細やかな面接や小論文指導を中心に行い現役での医学部合格を目指す「医学部講座」が大きな柱となっていきます。

「理系探究系」、「文系探究系」は旧帝大や医歯薬系を除く大学(岡山大学など)を志望する生徒のためのコースです。ここでは文理ともに5教科7科目の学習をバランスよく学習することが求められます。英語は新大学入試制度導入後の最初の数年間を経た後は民間の資格試験のみが採用されることになりますが、だからこそ英語の能力の育成が喫緊の課題となります。中学入学以来の6年間の系統的な英語学習の成果が進路実現を左右することになるので、英語を中心に学習スタイルを整える必要があります。特に中3からの英語学習に重点を置いた学習生活が最も重要なカギを握ることになります。

最後の「グローバル系」では1年間の留学を終えて帰国した生徒のニーズに合わせて少人数授業を行います。帰国後進級せずに5教科学習を行う場合には、通常の5教科学習に付け加えてネイティブ教師による英文の速読・スピーチやプレゼンの学習を通常の英語の授業の代わりに行います。帰国後、そのまま進級して海外大学や国内の国際教養系の大学に進学する場合にはGTECや英検の対策やネイティブ教師による英文の速読やスピーチや英語での面接の学習を集中的に行います。

新コース制の詳細がすべて決定されているわけではありません。上に述べた新コース制の新たな取り組みも、実際に学習が進むにつれて再検討する点も少なくないし、また新大学入試制度の詳細が明らかになるにつれて本校の取り組みも連動して柔軟に対応する場合もあると考えています。ご了解ください。 

6.指導に当たっての私の信条

 まだまだ生徒の志望を実現するための様々な工夫が可能ですが、結果として行事が多すぎると落ち着いて学習することができなくなります。着眼点が素晴らしくとも全体のバランスを重視して敢えて断念する取り組みもあると考えています。大切なことは生徒が目を生き生きと輝かせながら、そして、仲間と協力し合って学校生活を送り、自らの知的好奇心を満足させる6年間を過ごすことができるかどうかだと思います。

 最後に、教育活動を行うときの私自身の信条を述べます。

 1.教育における絶対的な価値基準が失われて久しく、「いかに人生を生きるべきか」という根源的な問いへの大人の側からの明快な答が消失してしまった。人生の先達として「君は自分の能力の限界に挑戦するために勉強し、世界に貢献する人物になるべきではないか」と口にすることは、価値が混乱する現代に生きる若者にとって「道標=灯台」の役割を果たすことになる。

2.「偏差値」「合格の数値目標」という枠組みではなく、個々の生徒の能力を最大限に開花させるという意味で「入るべき大学に入学させる」という信念が必要。これにより、すべての生徒に対して自信を持った「進路指導」が可能になる。大事なのは能力の限界にチャレンジすることであって、東大に入学することではない。

3.全ての生徒の前であえて東大を語ることが志大いなる者への敬愛の心を育成し、他者への依存体質を払拭させ、勉強することに対する自己韜晦(とうかい)の必要がない雰囲気を作り上げることにつながる。「生徒の偉大な挑戦」に対する教師の率直な激励が求められている。

4.「成績のよい生徒が東大に行くのではなく、東大を志望するから成績が上がる」という進路指導のパラドックスを理解する必要がある。その意味で、進路指導は究極的には「勉強法の指導」ではなく、「勉強する気にさせる生徒指導」に他ならない。